機関紙44-1号 (2009年4月28日発行)




もくじ
来年5月「国民投票法」が施行、護憲運動正念場に
 総選挙の争点の中心に改憲の是非を
 解釈改憲を強引に進め国民を恫喝する与党
 法案の不完全さの追及と若者の役割の再認識
  桂 敬一(元東京大学教授)
「マスコミ・文化 九条の会 所沢」結成4周年を迎えて
  佐藤俊広(会事務局長)
野蛮な戦争はやめよう!と世界が上げた声
 連続講座 今、学ぶ「日本国憲法」が開講
鈴木彰の「邪球とは分かっているがやめられない」
「所沢9条連絡会」が違憲判決一周年で講演会



来年5月「国民投票法」が施行、護憲運動正念場に

総選挙の争点の中心に改憲の是非を

桂 敬一(元東京大学教授)

 「憲法改正手続法」の施行が迫っている。同法は、「戦後レジームからの脱却」をスローガンに、アメリカの押しつけ憲法を日本人自身の手で書き直すと、真っ向から明文改憲を自分の使命と宣した安倍晋三元首相の執念と、その強行採決を含む強引な国会運営によって、法案成立をみたものである。

 法案成立は2007年5月18日、憲法第96条(憲法改正)の条項を、国民投票手続を中心に、細かく具体化した法律のため、「憲法改正国民投票法」と呼ばれる。この法律は、「公布の日から起算して3年を経過した日」を「施行日」とする、と定められているため、きたる2010年5月18日には、否も応もなく施行となる。この先もう1年しかないのが現実だ。

 確かに、自分の任期中に憲法を改正する、と見得を切った安倍元首相は、アメリカに対する、インド洋上の海自給油協力延長の約束が果たせそうもないのを苦にして、涙目の記者会見で辞任を発表する羽目に追い込まれた。そのあとの福田康夫前首相は、派手な明文改憲で危ない橋を渡ることは狡猾に回避、ぎりぎりまで解釈改憲でいこうとした。

 だが、細かいところまでいちいち口出しする公明党にうんざりし、腹を立てて政権をおっぼり投げた。その結果、憲法改正国民投票法施行前にも、同法内で定められている「憲法審査会」を衆院内に設置、そこで国民投票に付すべき事項の整理や投票実施に伴う作業など、同会のあり方や業務分掌を内容とする「憲法審査会規程」制定のための検討を急げ、とする声が与党サイドから出てはいたのだが、それに取りかかれるような状態になかったのが、これまでの政府の内情だった。

 このような事態を、支持率低迷の麻生太郎内閣も変えられず、見方を変えれば、各種「九条の会」が全国で7000も超すことになった護憲勢力が、彼らに勝手な改憲はやらせなかったのだ、ということもできる。

 だが、1年後の改憲国民投票法施行を控えた現在、状況は新しい情勢、問題の出現に伴って、安閑としてはいられないものに変わりつつある。

 第一は、北朝鮮のロケット試射に対して、政府が「ミサイル」迎撃・破壊方針を実行、陸海の自衛隊に応戦体制を取らせ、メディアと国民をある種の狂騒に巻き込む状況をつくり出したことが挙げられる。国民保護法で「指定公共機関」とされた放送は、政府発表の情報をそっくりそのまま流す始末となった。こうした事態が国民に、普通の生活も戦時体制と不可分な関係にある、と感じさせたことの効果を、軽視することができない。

解釈改憲を強引に進め国民を恫喝する与党

 第二が、時を同じくしたソマリア沖への海自の出動だ。海賊退治は本来、警察の任務だ。マラッカ海峡でそうした活動に実績をあげ、高い国際的評価を得ている海上保安庁がやる気でいたのを、麻生内閣は自衛隊にやらせることにした。

 目当ては自衛隊の海外出動の常態化だ。日本の民間船護衛のために、あるいは外国船救出のために、ドカンと一発やれるチャンスに恵まれたら、実質的に自衛隊は軍事的な国際貢献もOKだとする実績が残せる、と踏んだ節がある。「海賊対策新法」はそれを狙うものだ。

 第三は、普天間の米軍ヘリ基地の名護移転・沖縄海兵隊のグアム移転(日本側はおよそ60億ドルの費用負担)の日米協定の実施が迫っていることだ。どうみてもその内容は、今後の米軍の国際的軍事戦略の再編に添ってなされるものであり、そこにおける日本の費用負担の増大や沖縄の米軍基地の変容・自衛隊の米軍との共同作戦への参加の密接化などは、本土防衛を基本とする自衛隊や日米安保のあり方をそっくり変えてしまう。

 以上の三つは、明文改憲がむずかしければ、こうした事態を現実に人為的につくり出し、集団的自衛権は実質的にはすでに行使される状況となった一憲法九条は二項とも変えるしかないと、解釈改憲も限界に達した現実を国民に突き付けようとする企みの下に、やられているものだといえよう。

 そして第四として、改憲メディアがこうした企みの推進に密接に関わり、むしろ政治をリードする傾向さえ強めていることが指摘できる。改憲キャンペーンの先頭を走る読売は、国民投票法案成立直後から折りに触れ、憲法審査会の設置を促しつづけてきた。さらに今回の北朝鮮「ミサイル」迎撃、ソマリア海自派遣に関しても、先頭に立って強行策を提唱、米海兵隊グアム移転が8000人規模でなく、2000人程度でしかなく、沖縄基地の負担軽減は怪しいとする問題が浮上、野党が協定反対の態度をみせると、「民主党は『反米』志向なのか」と脅迫的な社説(4月16日)まで掲げたのだ。4月3日の世論調査の結果、改憲賛成が過半数(51・6%)となると、途端に「(憲法)改正論議を再活性化すべきだ」ともいいだしていた(6日社説)。

 このような情勢が生じているなか、わずか1年のちには国民投票法の施行があるというのは、護憲勢力にとって容易ならざる事態が迫っている、ということを意味する。だが、護憲勢力にとっても、明るい展望が開けてくる可能性もある。その一つは、国民投票法施行前に、かならず政権交代のかかる総選挙がある、ということだ。これまで考察したような企みを進めてきた政治勢力を、完膚無きまでに打ちのめす機会とするために、私たちは総選挙の争点の中心に改憲の是非を置き、各党・各候補者の姿勢を厳しく問うていく必要がある。

法案の不完全さの追及と若者の役割の再認識

 また、安倍内閣の拙速によってもたらされた国民投票法の欠点、不完全さを、改めて問題にしていくことも必要だ。最低投票率規程(投票率が一定水準以下の場合はその国民投票全体を無効とする)がないため、有権者総数のわずか15%の賛成でも、改憲ができてしまうなどは、まったくもって論外だ。

 また「年越し派遣村」の成功で、雇用不安の波を最も大きく受ける若者たちの政治的役割の重要性が、広く認識されるようになっている。国政選挙有権者とともに国民投票有資格者の年齢を18歳以上とすることも、今や緊急の課題となっている。それらとの取り組みを通じて、護憲勢力は、防戦的護憲に止まるのでなく、活憲的護憲のたたかいを有利に進めていくことができる。

 最後になるが、唯一の核兵器使用国・アメリカの大統領、オバマが「その道義的責任から、世界の核廃絶実現を目指すために努力を尽くす」と約束したことも、大きな力となる。唯一の核被爆国・日本はこれに対して、憲法九条と国是の非核三原則を生かし、オバマ大統領の目標実現に全面的に協力する、というべき立場にあるからだ。



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「マスコミ・文化 九条の会 所沢」結成4周年を迎えて

 3月26日、私たちの会は結成から4周年を迎えました。この間、私たちはじつにさまざまな取り組みをしてきました。最近では、自衛隊の田母神問題やオバマ大統領をテーマとした講演会、バスでの「身近な街の基地ウォッチング」などを行い、現在は連続講座「今、学ぶ『日本国憲法』」が始まっています。

この間、多くの方が入会され、現在、会員は343名になりました。いま世話人会では、早期に500名の会員を実現し、改憲手続き法が来年5月に控えるなかどのような活動を強化すべきか議論しています。  詳しくは、6月に予定の総会でみなさんにおはかりしたいと思いますが、以下のような点を話し合っています。

 これまでにもまして、●情勢とかみあった魅力あるテーマの講演会を行う、●牽引車の役割を果たしてきた「ニュース」のいっそうの充実、部数の拡大、●「文化展」など文化活動のゆたかな展開、●「基地ウォッチング」第2弾として、秋に横田・横須賀などの米軍基地見学、●所沢にある10の「9条の会」との共同した取り組み、などです。

 また、各地域で会員の交流をかねた「例会」の開催を考えていきたいと思います。さらに、会員どうしがきさくに話しあえ交流ができる「サロン(たまり場)」も検討中です。
   ぜひ、こんな取り組みをというご提案がありましたら、世話人までお寄せください。
(「マスコミ・文化 九条の会 所沢」事務局・佐藤俊広)



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野蛮な戦争はやめよう!と世界が上げた声

連続講座 今、学ぶ「日本国憲法」が開講

 60年以上も「戦争を知らない子どもたち」を守り続けたこの憲法に、きな臭い匂いが漂い始めた。改憲を主張する人たちは、いったい何をどう変えようというのか。このまま問われて、私たちには答えが出せるのだろうか。

 来年5月には、憲法改定の是非を問うための国民投票を行う凍結期間が終了する。
      2007年に18項目の付帯決議を付けて強行的に採決された国民投票法が、3年間の凍結期間を設けて施行されるのは、その間にいろいろな課題を憲法審査会で議論し、国民に明らかにするためだった。

 その審査会は07年に設置されたものの、これまでに一度も会議が開かれないまま現在に至っている。そのような状況の中で、あらためて「日本国憲法」を学び返そうと企画された連続講座。

 講座の柱は4つ。日本国憲法に掲げられた崇高な理想と目的を求めた世界史的背景。民主主義という言葉さえ持っていなかった日本で、その精神はどのように社会的定着をみたのか。一方で、新しい憲法を認めたくなかった人たちの歴史観はどのようなものだったのか。そして今、私たちはどのような課題を持っているのか。

 第1回講座は4月11日、当日受付の6人を含む34人の参加者を迎えて行われた。
前半45分、10分の休憩を挟んで後半45分という90分の講義は、どうやら初回のためか、かなり緊張した雰囲気のなかで進められた。

 歴史的源流をたどる第1回では、まず「第2次世界大戦と日本国憲法」として、戦争が偶発的ではなく国家の意識的政策として行われ、5千数百万人の犠牲者を出したことに触れ、*第2次世界大戦が戦後国際社会に提起した問題、*反ファッショ国際連合の枠組みと戦後の民主化、*日本国憲法の成立過程のいくつかの特徴、を学んだ。

 次に「「戦争の違法化」原則と社会権の登場」として、*「無差別戦争観」から「戦争の違法化」原則へ、*人権概念の発展、について17世紀から18世紀の市民革命にさかのぼって権利と自由のものの見方の変遷を学んだ。

 最後に「日本近代における歴史的源流」として、上からの改革として与えられた明治維新に対する下からの改革、*自由民権運動、*田中正造のたたかい、をふりかえり、日本近代の歴史的総括であり人類の財産であるという*日本国憲法の歴史的意味、を学んだ。

 

 さて、次回は私たちがこの憲法をどのように受け入れたのか、がテーマである。
 「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力を挙げてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」と憲法前文を締めくくるにふさわしい理解を得てきたのだろうか。

今後の日程と場所

3回目 5月9日(土)
時間:1時30分から3時45分まで
会場:ミューズ管理棟4F第2会議室
最終回 5月30日(土)
時間は変わりません
会場:新所沢東公民館(新所沢東口徒歩8分、バス「市民体育館」下車歩2分



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鈴木彰の「邪球とは分かっているがやめられない」



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「所沢9条連絡会」が違憲判決一周年で講演会

 あの歴史的なイラク派兵違憲判決から1年目の4月18日、小手指公民館分館で、所沢9条の会連絡会が主催する「名古屋高裁違憲判決の意義と田母神問題」と題する一橋大学吉田裕教授の講演がありました。

 さすが、近現代史を代表する研究者による講演。しかも自分で用意持参したレジュメ3枚のほかB4、2枚にびっしり詰め込まれた参考資料を駆使しての講演は事態の理解を広く深めさせ、参加者に多くの感銘を与えました。

 講演後の質疑応答では9条の果たす役割の広がりや軍需産業現場の非人間的な労働者への対応など10人を超える発言があり、時間を超えて進められました。

 講演は安倍内閣のように露骨な改憲路線が出てきたときには警戒心が高められるがそれが、後退すると警戒心が希薄化するのに何があるかと10年にわたる世論調査の動向を見ながら解き明かし、日本が敗戦による非軍事化から逆コースヘの移行過程を自衛隊の動向、シビリアンコントロールの確立、それを無力化する動きと戦争責任をあいまいにしてきた歴史的経過を織り交ぜて、今日の事態に至っていることを明らかにしてくれました。

  

 その中で、田母神論文がシビリアンコントロールの否定に果たしている役割とその背景、現在の自衛隊の持っている問題点をえぐりだされました。

 そして、名古屋高裁でイラク派兵違憲判決は平和的生存権を、すべての基本的人権の「規定的権利」として判決によって定着させたその意義は極めて大きいこと、さらに、政府の憲法・イラク特措法の解釈を前提にしても違反していることを明らかにし、なし崩しの海外派兵路線に大きな打撃となっていると話されました。(鴨川)



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