機関紙43-1号 (2009年3月23日発行)



もくじ
新聞の構造的経営危機とジャーナリズム
 情報の消費でなく、もっと批判的な目を
 丸山重威(関東学院大学教授)
オバマ戦略に不確かさ
 藤田博司さん(元共同通信社ワシントン支局長)を招き新春講演会
 講演要旨
  破たんした保守派の政策
  イラク戦争には反対
  ブッシュの単独主義、一国主義は排除
  ベトナム戦争の再現も
  外交はハードパワーからスマートパワーに転換
  エネルギー、医療、教育の三つが政策目標の中心
  富裕眉には増税
鈴木彰の「大あぐらかいたままでの小競り合い?」
あれこれ(17)
 母のいましめ (増岡敏和 詩人・青葉台在住)
  



新聞の構造的経営危機とジャーナリズム

情報の消費でなく、もっと批判的な目を

丸山重威(関東学院大学教授・日本ジャーナリスト会議、調布憲法ひろば、元共同通信社)

 私の現役時代、新聞の部数は世帯数の2割増し、つまり世帯当たり1・2部がほぼ維持されていた。「核家族化」が言われ新興住宅地が生まれても、この数は変わらなかった。

 

 新聞の広告費は既に70年代、テレビに追い越されたが、90年代から今世紀に入っても、新聞の部数は何とか5200万〜5300万部を維持し、世帯当たり1部を割ることはなかった。しかし、2008年はとうとうそれを割り込んだ。構造不況に金融不況が重なったということだが、新聞界にとってはショックの一言に尽きる。

▼「世帯当たり1紙」を割った新聞

 新聞協会の昨年10月の調査では、新聞の発行部数は、一般紙・4656万3681部、スポーツ紙・492万7728部で合計5149万1409部。世帯数に対し、0・89部である。2部も3部も購読する家庭もあるし、会社や団体の購読もあるから、新聞を取らない家庭が相当あることになる。1000人当たりの部数はセット紙を2部として計算しても、5028部。新聞離れは深刻だ。

 一方、広告も深刻で、昨年の媒体別広告費は、新聞は前年比の12・5%減。ついでに書くと、新聞、雑誌、テレビ、ラジオの4媒体でみると、7・6%減。携帯や検索の広がりで、前年比16・3%増となり、総広告費の1割を占めたインターネットと好対照だ。
   どうしてこんなことになったのか、どうしたら新聞や放送メディアを「再生」させられるのか、インターネットは新聞に代わりうるのか?

 原寿雄さんは「ジャーナリズムの可能性」(岩波新書)で、「情報栄えてジャーナリズム減び、ジャーナリズム減びて民主主義亡ぶ」といまの風潮に警鐘を鳴らし、雑誌「創」4月号の座談会では、「ノンプロフィット・ジャーナリズムを考える時期」「100年に一度の大危機だといわれるような経済状況は、資本主義、新自由主義を世界のジャーナリズムが本気で批判しなかったから」と指摘している。全く異議はない。

▼「情報」でなく「ジャーナリズム」を

 私流にあえて付け加えれば、いま日本のメディア関係者も、読者も、原さんが言う「情報」「ジャーナリズム」「民主主義」をまともに考えたことがない、あるいはそれを考える習慣が希薄になっているのではないか、と思う。ここで原さんは、「情報とジャーナリズムは違う」という当たり前のことを言外に言っているが、現状は、「送り手」の現場では「情報」に流され「ジャーナリズム」を意識できず、「受け手」はマスメディアの流す「情報」をただ「消費」するだけになっている。そこに「批判的な目」は育たない。

 インターネットは、自分が関心があって必要な情報は、探せばいくらでも取れるが、自分の関心がなければ、全く情報に触れない可能性がある。しかし新聞には、編集者が読者に知ってほしいと思う情報は、全て掲載され、「一覧」することができる。ここに新聞の社会的意味があり、新聞は必要なのだ。

 いま重要なのは、この共通認識を、「送り手」と「受け手」の両方が共有することが、まず必要ではないか、と思う。それは、新聞が単に「情報を売る」メディアではなく、本当の「ジャーナリズム」になることでもある。

 まずは「伝えるべきこと」と「論じるべきこと」を考え、.「ジャーナリズム」を意識すること。マスメディアの「再生」は、そこから始めるしかないのではないだろうか。



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オバマ戦略に不確かさ

藤田博司さん(元共同通信社ワシントン支局長)を招き新春講演会

 アメリカ特派員生活の長い元共同通信社の藤田博司さんを招き、「オバマ大統領でアメリカはどう変わるか」と題しての、新春講演会が2月28日、新所沢東公民館で開かれた。

 共和党から民主党に政権が移り、米国史上、初の黒人大統領誕生とあって集会への関心は高く、会場は満席となった。

 藤田氏は「オバマさんは現実主義者であることを踏まえて、過度の期待をしないように」と示唆。「日米の関係が対等になる絶好の機会である」と指摘した。参加者からも活発な質疑があった。


講演要旨

 所沢に住んで35年ほどになります。所沢市民大学でも何度かお話させて頂いています。地域の人と話せる機会を持って頂き嬉しく思っています。共同通信で35年ほど現場記者をやっていました。大半は外信部というところに籍を置いて、国際ニュースを扱う仕事をし、35年の内、3分の1は海外での仕事でした。

 67年から69年まで戦争が激しかった頃のサイゴンが海外での最初の仕事だった。その後はアメリカで仕事をする機会が多く、80年代の後半にワシントンで3年余りと、若干アメリカに偏っているが、60年代から90年代の初めにかけて30年近く、アメリカをいろんな角度から観察する機会を持った。

 「オバマでアメリカは変わるのか」を30年経験したアメリカ生活を通して、私なりの判断というか分析を述べたい。

 この一週間で新しい施政方針演説、予算教書を発表したり、昨日はイラク撤退についても発言したり動きが大きい。そういうことを含めて、オバマさんがなぜ大統領になれたかの背景と意義について述べたい。オバマさんが何をしたのか、具体的な政策や中身や、これからのアメリカをどの方向に導くのか。その展望についても触れたい。

 施政方針演説の中で明らかにした彼の考え方を裏付ける具体的予算措置が予算教書の中で明確になっている。将来の展望を考える上で参考になる。この点について詳しく説明し、日米関係の今後についても考えてみたい。

 麻生さんが、わざわざアメリカに行って、一泊もしないで帰ってきた。アメリカが日米関係を重視した結果というが、単純にそれだけのことだろうか。オバマさんが大統領になった歴史的な意義は、アメリカニ百数十年の建国の歴史の中で、初めて黒人の大統領が誕生したことだ。44代の歴代大統領、一人は二代続けたので人の数からは42人目の大統領は全て白人だった。奴隷制度をとってきたことから、黒人が平等になったのは最近のこと。黒人は公職に就くことさえ難しかった。60年代の公民権運動が差別撤廃、平等を推進することに大きく貢献した。64年に人種間の平等が建前的には実現したが、実際のアメリカ社会の中での政治的な差別、経済的な差別、社会的な差別は続いてきた。

破綻した保守派の政策

 黒人の大統領が出てくることは20年前までは予想しがたいことだ。そのことが大きな意味を持っている。アメリカ人自身がオバマ大統領の実現を信じられないだろう。アメリカの友人もオバマが立候補宣言をしたときに泡沫候補の一人くらいにしか考えていなかった。民主党内の予備選挙を通じて確実に力を固め、経験は少なくても優れた政治家であることを選挙民の前で次々と実施していったことで今回の当選につながった。

 アメリカ人も予想しなかった変化がここ数年に起きていた。人種に対する意識が大きく変わった。アメリカの人口構成の変化も大きい、黒人16%、マイノリティ5〜6%、アジア系・日系が2〜3%と全部会わせて20%少しに対して、白人が70%を切り60%台に落ち込んでいる。あと40年で白人は少数派に転落する。いままで少数派と言われた、黒人やスペイン系、アジア系の人達が過半数を占めるようになる。そういう時代がそこまで来ている。これがオバマさんを押し上げる大きな要因だった。

 指摘しておきたい歴史的背景は、政治を支配してきた保守派がここにきて大きな壁にぶつかっているという点があげられる。ある意味で保守派の政策が破綻している。

 80年代の初めに登場したのがレーガン大統領で、彼は小さな政府を全面に押し出して後は市場原理に任せ、規制緩和、市場の自由化を強引に進めた。このころから政治の保守化が政治の流れを決めるようになってきた。はっきり保守革命と呼ばれる動きが出たのが80年代。レーガン、ブッシュそして民主党のクリントンが8年間大統領を続けるが、政治的には保守的な政権であった。クリントンの跡を引き継いだのが息子のブッシュ。このブッシュの8年間はご承知の通り、強引なネオコンと呼ばれる新自由主義者、超保守派に支配された政権であった。その8年間が終わってオバマさんが登場した。

イラク戦争には反対

 保守派が崩れた理由は経済的な行き詰まりだ。市場原理を最優先するという考え方が去年の秋に弾けた金融バブルでアメリカだけでなくて世界中に不況、あるいは金融不安を及ぼす結果となった。これが長い間の保守革命の帰結と私は考えている。もう一つは9・11を受けてブッシュが取ったテロとの戦争の御旗のもとにアフガニスタンに兵を出し、その後、イラクにも兵を送って、二つの戦争を抱え込んだ。それらによって、アメリカは対外的にも、にっちもさっちもいかない事態に自ら追い込まれてしまった。

 ブッシュ政権に集約される格好で保守路線の行き詰まりが結果としてオバマの当選を助けた。彼はイラク戦争に反対してきた数少ない上院議員の一人だった。指名を争ったヒラリー・クリントンはイラク戦争の開戦を支持し、それが民主党内で候補の指名争いをする際に有利に働いた。彼はイラクと開戦を決める上院での投票のとき、彼はその場に居なかった。だから最初から反対だったと言えるのだろう。イラク戦争に反対してきた数少ない上院議員の一人だ。そうした政治的経緯がオバマさんを押し上げる結果となった。

ブッシュの単独主義、一国主義は排除

 オバマ大統領はブッシュから引き継いだ二つの宿題を抱え込んだ。アフガン、イラクでの戦争と経済・金融問題だ。

 ブッシュが引き継いできた保守的経済運営が今になって最悪の事態に陥った。リーマンブラザースが破綻する。それに前後したAIGとか大手の銀行、保険会社が経営危機に直面する事態が起き、金融危機がアメリカだけでなく世界的に広がっていくなかで、対抗馬のマケイン上院議員との間で政策が対照的であった。結論的に言えばオバマさんの方がしっかりした対応をする姿勢を見せたことだ。

 これに対して、マケイン上院議員はオタオタして対応が出来ない候補であると受け取られた。ここで形勢が逆転した。経済の破綻がオバマさん当選に寄与した面がある。この経済の再建も大きな宿題となっている。

 就任演説での特徴は、イデオロギー的な立場は取らないと明言している点である。ブッシュ政権は9・11の直後に、アメリカに対して敵か味方かそれしかないと二元論的な対応をした。その後も敵か味方かを繰り返した。オバマさんは二元論的に物事を考えない。力が全てとは思わないとも発言している。イラクでの戦争に代表されるように、アメリカが正しいと思えばなんでもやってしまうのがブッシュの単独主義、一国主義だが、オバマさんはこれを排除する。単独で行動する立場は取らない。話し合いの用意があると、はっきり語っている。イランや北朝鮮とも条件が満たせば話し合うと述べている。これも大きな違いだ。

 オバマさんは理想主義者とも言われているが、それより現実主義者と言ってよい。将来を考える際に、このことがプラスになるのかマイナスになるのか議論があるが、日本がこの先、オバマさんとどう対応するか考える場合に、彼が現実主義者であることを踏まえておく必要がある。熱い期待を持つようなことはしないことだ。

 前のブッシュ政権の路線からははっきり決別すると意思表示をした。矢継ぎ早に政策を打ち出して、経済と金融の立て直しに取り組む姿勢を見せている。

 アメリカ人の92%が経済が深刻な状況にあるととらえ、ブッシュからオバマに引き継がれる際の2009年度の財政赤字は1・2兆ドルで、その後の予算教書を読むと1・7兆ドルに膨らむ。クリントン時代は財政の健全化を進め、その結果、黒字に転じた。

 それがブッシュ政権になって赤字になる。累積された赤字の残高は9兆5千億ドルにもなる。失業者が昨年後半だけで250万人増え、失業保険を貰っている人が500万人。前年の倍増となっている。失業率も7・6%と高くなっている。その後も経済の悪化が止まっていないので最悪の場合は10%を超える恐れがある。GM、クライスラーは巨額の政府援助を受けていながらも立ち直る見通しはない。GMはいったん破綻させて整理するほうがよいと言われている。経済・金融の立て直しと戦争をどうするかの問題でオバマ大統領は苦闘している。

 巨額な政府資金が銀行・金融に投入される、そこまで来たことで、逆に不安感となって株価も下がっている。しかし、そこまでしないとアメリカの経済は立ち直れないと、深刻な状況に直面して、思い切った施策を進めようとしている。サブプライムローンがきっかけとなって金融不安が拡大するのだが、500億ドルを政府が導入してローン返済不能者を助ける施策や、景気刺激策として75兆円を投じた。3の1は減税、残りは道路の補修、橋の建設など政府支出で雇用の創出をねらっている。自動車産業を救済するのが当面の課題だが、GMも手持ち資金が底をつきそう。これを救済するのかについては反対も根強い。大きすぎて潰せないのが金融と自動車。自動車を潰すと300万人が職を失うことを見過ごすことはできないというのが、オバマさんの考え方だろう。難しい決断を求められている。

ベトナム戦争の再現も

 外交と安全保障では、来年の8月末までに約10万人のアメリカ兵を撤退させる。イラクには14万2千人いるが、残り3万から5万人は米兵を残す。選挙公約からは食い違いもあり、全ての米兵を撤退させるわけではない。しかも、ミッションにテロに対する掃討作戦行動が含まれている。戦闘行動を止めて帰るということではない。残った兵力はイラクの治安とイラク兵の教育に使うという。戦争行動は残るとオバマさんは言う。

 これに対しては民主党の一部の議員の中から、「オバマは約束を守っていない」と反発が出ている。11年末までに撤退完了というが、現地とペンタゴンと協議した結果で現実的な対応を余儀なくされている。アフガニスタンに対しては、1万7千人増兵する。公約と食い違いはないが、イラクの撤退、アフガニスタンに増兵する軍事的戦略について理解できないものがある。

 ベトナム戦争にのめり込んだ時の考え方と似たものがある。最初は軍事顧問団の派遣で自らは戦争はしないと言いながら、どんどんベトナムに米兵を送り込み最終的には52万人にもなり、泥沼化した端緒が「ベトナムに民主的な政権を作る」と言ったケネディ、レーガン、ブッシュと思考が同じことに注目したい。アフガニスタンでベトナムと同じ失敗を繰り返すのではないかと不安になる。アフガニスタンヘの派兵は彼のこれまでの言動から理解できないものがある。

外交はハードパワーからスマートパワーに転換

 オバマさんをアメリカ国民がどう評価しているかと言うと、支持率は67%から68%だ。麻生さんから見ればヨダレが出そうな数字だ。就任したときから落ちてはいない。ケネディに次いで歴代2番目の高い支持率となっている。施策への支持率も高い。

 オバマさんが約束したチェンジが実現しつつあるかとの問いに、68%の人がそうだと答えている。一方で無条件で支持しているわけではない数字もある。景気回復に否定的な答えが44%もあるが、全体的に見れば、オバマさんはたいへん大きな財産を持っている大統領である。

 彼の就任演説から、先を見通すことができる。アメリカという国を今後4年間でどちらの方向に引っ張っていくかを明確に打ち出している。国を再建することは不可能でない。もし、その努力が実ればアメリカが再び強い国として復活するだろうと語り、なにをすべきかの中で、三つの目標を掲げた。

エネルギー、医療、教育の三つが政策目標の中心

 一つはエネルギーで石油には依存しない。

 二つめは医療保険。アメリカは先進国の中で唯一国民皆保険が無い国だ。老人や低所得者にはあるが、中間層の保険は民間保険にまかされている。その医療保険を公約通り、手を付けようとしている。

 三つめは教育問題。大学や高等教育が貧困などの原因で途中で、ドロップアウトする場合が多い。こういうケースをできるだけ無くし、教育の質を高め、2020年までにアメリカの教育を世界一にする。

富裕眉には増税

 この三つが政策の目標の中心になり、それに加えて財政の健全化だ。巨額の財政支援と矛盾するように見えるが、自分の最初の任期中に財政赤字を半分にすると言っている。

 財源をどこから引っ張ってくるのか。それは高所得者に対する増税である。日本でいえば2500万円以上の所得がある人への増税を財源にする。レーガン政権の時からは富裕層への税率が大幅に引き下げられた。現行の上限。35%を39・6%に引き上げ、配当などの税率も見直す。

 アメリカの経済の構造を思い切って変えようとする方向が見える。
 自動車産業にも政策の転換を求め、グリーンエコノミー(環境に配慮した経済)を訴えている。アメリカの外交姿勢は変わる。

 ハードパワーからスマートパワーに外交の重点を移すだろう。ハードパワーは軍事力だが、反対語に文化や芸術を軸としてソフトパワーがある。ハードとソフトを合わせたものをスマートパワーと言う人たちがいて、これから先は力任せに軍事力で外交を進める時代ではないという思いだ。

 そういうやり方でないと長期的にアメリカの国益を守れないと言っている。地球温暖化への取り組みにも変化の兆しが見える。核軍縮の問題で核の脅威にも触れている。核拡散防止条約もアメリカなりの取り組みを前面に出すかもしれない。



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鈴木彰の「大あぐらかいたままでの小競り合い?」



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あれこれ(17)

母のいましめ

増岡敏和 (詩人・青葉台在住)

 先輩などから書いてもらった3枚の色紙を、私は額に入れ書斎に掲げている。

 その一つに筆の達者だった亡母の私へのいましめの色紙がある。「腹を立てるな」と。「昭和33年正月、おふくろ」と署名されている。それは西暦で言えば1958年だから、今年から51年前のことである。その遠さが色紙に潜んでいて、短気な私へのおふくろの投げてくる日頃のたしなみがいまにしていとおしい。

 私はその数年前に広島から上京したのだが、母の生きている間は毎年正月によく帰郷していたので、51年前に私が依頼して一筆したためてもらったのである。以来この色紙は書斎の上からいまも私を脾睨している。だが、そこにはよく眼をやるが、その文章をふりかえる真面目さ程には、実行がないこともあり、反省しているところである。



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